機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(51)

福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(51)local_offer

精神科看護師 上原利恵

精神科に勤務して思うこと―ありのままを受け容れる、ご家族の大切さ―

私は、精神科で働き始めて20数年が経ち、現在も同じ病院の通所リハビリテーションで働いています。電話相談業務も行っていますが、相談者の中には精神疾患を患っている方の家族が多くいます。そのご家族の気持ちが少しでも楽になって欲しいと願って相談業務を始めました。

誰かが精神疾患に罹ったことに対して、家族はそれを受け容れていくことが必要だと思います。私の子供たちは、理由がはっきりしませんでしたが、不登校になりました。その当時、子供たちに対して私は無理に行くよう怒鳴っていました。受け容れることができなかったのです。受け容れるまで約1年かかりましたが、それからは、自分が冷静になることができ、周りが見えてくるようになりました。すると、子供たちの様子も見えてきます。どうしたいのかを聞くことができ、最終的には高校を卒業することができました。

精神疾患を発症した場合、いろいろな症状が現れます。例えば、急に職場や学校に行けなくなる。電車に乗れない。急にイライラして怒りを爆発させ物に当たり、家族や他者に対して危害を加える。自傷行為がある。幻覚、妄想があるなどです。

これらの症状が出る場合、背景に病気があることが多いので、精神科や心療内科に相談されたほうがいいです。受診し、そこで出された診断結果をありのまま受け容れることで、一歩、先に進めると思います。しかし、 受け容れることは、実際には簡単ではありません。とても大変なことでもありますが、ひとりで悩まず相談できたらよいと思います。

病気を治療する場合、通院するか、入院するかは、その時の症状により異なりますので、医師と相談し、その指導を受け容れてほしいと思います。また、精神疾患の治療は、長期にわたるため、お互いに持久力が必要です。

治療のため家族と離れて生活することが必要な場合もありますが、離れていても家族の支えは大切です。裏切られることも多くあると思いますが、諦めることなく見守ってほしいです。

入院した場合の治療の流れは、急性期は薬物療法がメインになり、落ち着いてくると薬物療法と併用してリハビリテーション療法等が行われ、日常生活ができるように支援していきます。

退院に向けて家族、医師、訪問看護、地域のケースワーカー、保健師、ヘルパー等でカンファレンスを行い、退院後の支援を行っていきます。

精神疾患を患ったことを誰にも言えないと思うかもしれませんが、実際には同じ立場の方が多くいます。相談場所は、市、区、町、村の役所に保健所があり、また精神保健福祉センターがあります。また、精神疾患を抱える方の家族会があります。そこには、自分と同じ悩みを抱えている人がいるかもしれませんので、話を聞いてみるのも良いと思います。

私自身は、今後とも相談員を続けていこうと思っています。